Pavo Pico IIの飛行制御について学び始めてから、「ジャイロ」という言葉を頻繁に目にするようになった。
最初は何となく機体の傾きを検出するセンサーだと思っていたが、調べるうちにその歴史は想像以上に古いことが分かってきた。
まず、昔のジャイロは現在のドローンに搭載されているような電子部品ではなかった。
高速回転する金属ローターを用いた、いわば機械装置だったのである。
子供の頃に遊んだコマを思い出してほしい。
高速回転しているコマは倒れにくく、向きを変えられることを嫌がる性質がある。
これがジャイロ効果である。
実は飛行機や船舶でも、この原理を利用したジャイロが長年使われてきた。
飛行機の人工水平儀や船舶のジャイロコンパスには、高速回転するローターが搭載されていた時代があった。
私は昔のハードディスクドライブを持ち上げた時、不思議な力を感じた記憶がある。
回転中のHDDの向きを変えようとすると、なぜか抵抗するような感覚があった。
あれも一種のジャイロ効果だったようだ。
しかし現在のドローンに搭載されているジャイロは全く別物である。
Pavo Pico IIのFCに搭載されているのは「MEMSジャイロ」と呼ばれる超小型センサーだ。
MEMSとは Micro Electro Mechanical Systems の略で、微小な機械構造と電子回路を組み合わせた技術である。
驚くことに、このジャイロには回転するローターは存在しない。
代わりに、チップ内部に作られた極めて小さな構造物が高速で振動している。
機体が回転すると、その振動の状態がわずかに変化する。
センサーはその変化を電気信号として検出し、現在どの方向へどれくらいの速度で回転しているかを計算している。
ここで重要なのは、ジャイロは「角度」を測っているわけではないという点である。
ジャイロが測定しているのは「角速度」、つまり回転の速さである。
例えば機体が右へ毎秒100度の速度で回転しているなら、ジャイロはその回転速度を検出する。
一方で、右へ20度傾いた状態で静止している場合、回転していないためジャイロは角速度ゼロと判断する。
このため、ドローンではジャイロだけでなく加速度計も組み合わせて使用されている。
ジャイロは回転速度を検出し、加速度計は重力方向を検出する。
その情報をFC内部のBETAflightが統合し、現在の姿勢を計算しているのである。
さらに驚いたのは、その計測頻度だ。
現在のBETAflightでは、ジャイロ情報を毎秒数千回という速度で読み取っている。
私たち人間が機体の異変に気付くよりはるかに早く、FCは機体の動きを監視し続けている。
以前の私は、ドローンはモーターとプロペラで飛ぶ機械だと思っていた。
しかし学びを進めるうちに、実際にはセンサー、コンピュータ、制御ソフトウェアが連携して動く高度なシステムであることが分かってきた。
数ミリ角のMEMSジャイロセンサーの中には、飛行機や船舶で使われてきたジャイロ技術の歴史が凝縮されている。
そう考えると、Pavo Pico IIの小さなFCにロマンを感じるのである。



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